episode1-7 | 巨大なピンセットと注射器 | 泌尿器科、受診

尿膜管遺残症ということが確定して泌尿器科に回された私は待合室へ向かった。

時間はもうとっくにお昼を過ぎて待合室にも患者さんはほとんどいなかった。

2、3分くらいですぐ先生に呼ばれて診察室の隅にあるベッドに横になるように言われた。

泌尿器科の部長さんであるその先生は見るからに経験豊富そうで、今度はちゃんと治してもらえそうだと少し安心した。

大体は皮膚科の方から聞いてるけど大変だったね…

そう言っておへそを確認すると先生はうっ…と声を詰まらせ険しい表情になった。

これは膿を搾り出さないとダメだな。今も相当痛いでしょ?

歩くのも大変なくらい痛いです…

と私が答えると先生は大きく頷いた。

それから先生が看護師さんに何か持ってくるようにお願いすると、奥から手術セットのようなものが一式運ばれてきた。

じゃあちょっと痛いかもしれないけどごめんね!膿を出さないと炎症が収まらないからちょっと出しちゃうね!

今も十分痛いし、少し痛いと言ってもそんなに変わらないだとうとその時は思った。

炎症がひどいから麻酔も効かないだろうし、麻酔なしだけどごめんね!

麻酔なしは明らかにまずいッ!

そう思った瞬間、先生が今までに見たこともないくらい大きなピンセットをおへそに突き刺した。

ぐ………ああああああああ……………

必死に声が出そうになるのを我慢したけどあまりに痛過ぎたので変な声が出てしまった。

ごめんねー。麻酔なしだとやっぱり痛いよなー。

そんな言葉とは裏腹に先生は巨大なピンセットでこれでもかというほどおへそをグリグリした。

奥にグリグリと突き刺したりグイっと広げたり何かつまんで引っ張ったりとそれはそれは酷いものだった。

痛さレベル4.5

痛すぎて失神してしまうのではないかと思ったけど、全然そんなことはなくてただただ激痛に耐える時間が続いた。

20〜30分くらいピンセットの拷問が続いた後、私のおへそは大量の膿と血が流れ出てぐちゃぐちゃになっていた。

これくらいでいいかな。

先生が巨大ピンセットを置いたのでやっと拷問が終わった…と安心したのも束の間、先生が今度は見たこともないような太さの大きな注射器を手にした。

やばい!なにか!やばいぜッ!

それじゃあ今度は洗浄します。

そう言うと先生はぐちゃぐちゃになったおへその真ん中に巨大な注射器をブスっと刺した。

が………

おへその奥まで注射器を刺されるのも相当痛いけど、洗浄の痛さはここからが本番だ。

注射器の針が奥まで到達すると今度は勢いよく生理食塩水を注入した。

あがが…………

おへその内側から刺されたような痛さに変な声が出てしまった。

膿と血が混ざった食塩水が勢いよく出てきてTシャツはびちゃびちゃになっていた。

注射器1本分の生理食塩水を注入すると先生はもう1本の注射器を手に取った。

もう1本洗浄しまーす。

………

2本目の生理食塩水を注入し終えると先生はまた巨大ピンセットを手に取った。

その後ピンセットでグリグリ、注射器で生理食塩水注入を2、3回繰り返してやっと治療が終わった。

おへそからは大量に出血したままでかなり痛かったけど、奥に溜まっていた膿はひとまず全部出し切れたようだった。

とりあえず膿は出したので、明日からしばらくの間毎日洗浄しに来てください。

先生からそう言われて、明日からしばらくこんなに痛い思いをするのかと思うと気が滅入った。

今後のことについて色々聞いてみると、炎症が治った後に手術するかどうか考えればいいけど今回膿が溜まっていた場所が浅いところだったから手術しなくてもいいかもとのことだった。

この時はできれば手術はしたくないと思っていたので少し安心した。

あとは同じ抗菌剤を飲み過ぎて薬が効かない菌が増殖している可能性があったので感受性検査もすることになった。

この感受性検査の結果がでるまでは抗菌剤は飲まないことになった。

 
 
 

しかし珍しい病気になっちゃったね。うちの病院でも一昨年に1人来ただけだもんな。

と先生は少し嬉しそうだった。

しばらくは毎日洗浄するのでとりあえず明日も来るように言われた。

帰宅しようと立ち上がって歩こうとしたものの、常におへそに何か突き刺さってるような痛みがあったのでその日はタクシーを呼んで帰った。

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